テーマ:小説

紅紫の月 3

『・・・!!』  息を飲む。この『宿』全体に漂っていた奇妙な空気と同種の、いや、其れをもっと濃縮したような空気。まるで、この部屋がその『香り』の大元であるようだ。 部屋の照明は応接間などと同じく、ほの暗い。柔らかく、心地いい具合だ。  その部屋の奥。入り口に真正面から対座する位置。 『彼女』は悠然と、くつろいだ様子で煙管…
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紅紫の月 2

ようやく体が温まってきた。かじかんでいた手足にも血が巡り、麻痺していた感覚を徐々に取り戻す。ほんの少しだが、炭鉱の空気を思い出した。こことは性質が全く異なり、何処にも共通点などありはしないのに。 そこで初めて室内を見渡した。 室内はほの暗く、暖炉の他には小さなランプが幾つか置いてある限り。足元を照らすのに、ギリギリ事足りる程度だ…
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紅紫の月

私はその時途方にくれていた。宿を取りたいのに何処もいっぱいだと言う。 『部屋は、あるか?』 『やぁ、お客さん運が悪いねぇ。ついさっき最後の部屋が埋まったばっかりだよ。他を当たってもらえるかい?』 この様な問答を2・3度繰り返した。そもそもこの街にもう宿は無い。全て廻ってしまった。 野宿、という選択肢もあるのだが、生憎…
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